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日本語吹替版「Wreck-It-Ralph」を観てきた

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先週末、地元の映画館のレイトショーで、ビデオゲームの世界を題材にしたディズニー映画最新作「シュガー・ラッシュ」を観てきた。

地元や近辺で観たい映画がレイトでやっていると、上映終了時間が23時を軽く過ぎても電車と徒歩で帰れて、しかも値段的にもお得なうえに観客も非常に少なくて超快適なので、ちょくちょくレイトショー上映を利用してる。春分の日の3/20にも「ジャンゴ 繋がれざる者」をレイトショーで観に行ったばかりだったけど、そういや昨年の発表からずっと公開を楽しみにしていた本作が、この週末に上映開始だった。ゲーオタとしてこの映画は絶対初日に観なければならないと思っていたので、早速レイトショーで席予約して観に行った。

 

すっごく、良かった! 素晴らしい、いい映画だった。人目に非常に触れにくい当闇ブログなので、ネタバレ放題で感想書いちゃうぜーウヒヒーと思ったが、公開したてでもあるので、できるだけネタバレはせずに書くように務めてみる。

 

当初、実在ビデオゲームのタイトルやキャラクターの豪華出演の触れ込みで本作を知ったのだが、画面の隅々までアレやソレのゲームキャラが登場しているのが、とても嬉しくて楽しくて、終始ニヤニヤが止まらなかった。細かすぎるキャラ配役探しのために、こんなにもう一度劇場ですぐ観たいと思った映画は久々だ。ペーパーボーイはひたすらずーっと新聞配ってたぞ!

 

個人的に一番気にかかっていた、ゲームの世界がメインの本国と、劇中に登場するレースゲーム『シュガー・ラッシュ』の、いかにもディズニーっぽいポップでピンキーでスウィートな世界がメインの日本との、作品要点プロモーションの甚大なギャップは、やっぱり日本で本作を売るためには、ディズニープリンセス的ヒロインや世界観を見立てたキャッチーなイメージの後者を選択せざるを得ないのだなーと、自己納得させるしかなかった。だけどあの邦題「シュガー・ラッシュ」は、全編通して観たあとだとより一層、なぜこうなってしまったという憤りと、壊し屋ラルフの無念さを感じてしまう。馴染みのない英単語だけど「レック・イット・ラルフ」、あるいは「はちゃめちゃラルフの大冒険」でもよかったのよ? あと同じく心配(?)の種だったAKB48のエンディングテーマ曲は、ジャパニーズカワイイ曲感がいっぱいで、なかなかよかった。

 

ゲーム世界のキャラクターたちが、仮想空間「ゲームセントラルステーション」のケーブルを通じて、筐体が稼働し続ける限り、定められたゲームの中を往来してプログラム通りのアクションをするのが、彼らの絶対ルールという設定の中には、彼らやゲーム世界を作ったいわば神的存在のゲームクリエイターが、ほとんど登場せず、ゲームキャラたちが自身の意志でもってプログラムに則った行動を取るのが、とてもよかった。

もしあそこに彼らを作った神=ゲームクリエイターが登場していたら「神の力」でゲームキャラや世界をヘンに動かしてしまう絶対強制不可ルールができてしまうし、あのゲーム世界の中では、人間はモニタの外側でプレイし、ゲームがうまく作動しなければ筐体に「故障中」のビラを貼る、あくまで夢の世界の傍観者だ。

劇中では、ゲームキャラ自らが超有名な裏ワザコマンドを入力してゲーム内プログラムやメモリを改ざんするシーンが出てくるのだけど、こうしたプログラム想定外の意思行動までが限度であって、本当によかった。バグや不具合でもないのに、ゲームキャラたちがどうしてそんなことができるかは、夢の世界だからとしか言いようがない。

 

上映前に購入したパンフレットを読んでいたら、本作監督は、同じディズニー映画で同じく意思のあるオモチャたちを題材にした「トイ・ストーリー」と、オモチャとゲームで題材が似通っている部分は認めるが、「トイ・ストーリー」とは違った作品にしたい、と語っていた。

自分が考えるここの相違点は、「人間に遊んでもらう」点では同じだが、「トイ・ストーリー」のオモチャは、人間の子どもに遊んでもらうのがオモチャの使命であり人生だと考えているのに対して、「シュガー・ラッシュ」のゲームキャラたちは、プログラムに準じた行動を正確に取り、精密に動くことでプレイヤーの人間を満足させることが自分たちの宿命であり、もしこれが不自由になると、人間に不具合だと見放されることを恐れている。人間がやる「遊び」の意味が、オモチャとゲームではまったく違うのだと提示されたような気がした。

どちらも人間に遊んでもらえなくなったら生命を終える時を迎えるのは共通で、自分の場合は、これが特にゲーム寄りなのだと感じさせられた。

忙しくキャラが動き回るゲームセントラルステーションで「仕事を失いました。仕事をください」を嘆願する『Q*bert』のキャラたちが、まるで誰にも気づかれずに時の中に埋もれてしまったゲームタイトルが具現化したように見えて、キュッと胸を締め付けられた。この世には、なぜ生まれてしまったのか分からないようなゲームがたっくさんあって、きっとみんなこんな風に感じてるのだろうなー、とか。

 

トイ・ストーリー」が、もしオモチャに意思があって自由に動き回ったら……? という子どもたちの夢ならば、「シュガー・ラッシュ」はたぶん、よく漫画家が自分の生み出したキャラが自身の意思で勝手自由に動き回る、と語るように、ゲームクリエイターたちの夢なのかも。もしそうならば、夢の主役は彼らと遊ぶプレイヤーであってほしいなと思った。

 

ほかにもいろんな感動がたくさんあったけど、おおよそこんな感じで。月並みな感想だと、ゲームを題材にあらゆる世代が観ても感激できるのがすごいし、お菓子の世界が舞台のレースゲームが、実はとびっきりクールなマリオカートに進化するのが、レースゲーム好きにはとても刺激的だった。ゲーム好き、あと甘いお菓子好きには超たまらない本作なので、お菓子をいっぱい抱えて観るべし。

 

 

P.S.

本日で閉店を迎えた、神保町の「ゲームコーナー ミッキー」に、映画を観た翌日、駆け込みで最後のお別れをしてきた際、なんと465in1筐体に『Q*bert』が入っていて、初めてプレイできた。よかった、彼らにもちゃんと仕事場とプレイヤーがいたよ。レバー操作がめっちゃムズくて即死しまくったけど!

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