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100YEN映画のDVDが届いたので観た

 

1本100円の映画、という意味ではもちろんなく。

日本のゲームセンターやアーケードゲームシーンを紹介する、海外のドキュメンタリー映画「100 Yen: The Japanese Arcade Experience」のDVDがついに完成して、やっと手元に届いて観ることができて、とても感動したので感想を書く。

 

indiegogo」という、あらゆるプロジェクトの寄付支援を募るサイトで、映画公開やソフト制作資金の寄付を受け付けていたのを知ったのがちょうど1年ほど前で、これはぜひとも観たいしDVDとしても欲しかったので、デジタルダウンロード版&DVDとクレジット掲載特典コースの35ドルを寄付した。

 

海外ではかなり普及してるっぽい、この手の寄付支援は初めて経験したけど、英語フォームの壁やPayPal登録の手間が若干面倒なだけで、英語文化に疎い自分でもなんとか寄付ができた。PayPalは前々から登録しておきたかったのでちょうどよい機会だった。

 

 

そして映画内容は、非常に充実した、納得のいくとても素晴らしいものだった。

日本のアーケードゲームシーンは、日本独自で進化していったという前置きに、タイトーの『スペースインベーダー』の誕生から全国でインベーダーブームが起き、日本国内の100円硬貨が不足して造幣局が通常よりも多く100円硬貨を発行したことが、タイトーのスタッフにより語られていた。

だいぶ前にTV番組などでその有名エピソードを聞いたことがあったが、実際に公式の元に語られるのは貴重な証言だと思った。

前身誌でお世話になったz……岡野氏も、日本のゲームシーンのコメンテーターとして登場していて、相変わらずラガーシャツが似合ってるなーと思った(雑な感想)。ざっくり切られてそうだけど「8bit年代記」の闇ゲーセンの話もされたのかな。

 

インベーダーを皮切りに日本のシューティングが進化したと語っており、江古田にある50円ゲームセンター「えびせん」の店長やスコアラーの話も興味深かった。後半に出てくる音楽ゲームシーンの話もだけど、世界記録が日々更新されるスコアランキング集計は熱い。

 

映画では、インベーダー誕生から続いたシューティング盛栄の勢いが90年代以降はストⅡをはじめとする対戦格闘ゲームDDRビーマニなどの音楽ゲームへとシフトする流れを、トッププレイヤーのインタビューとともに、日本のゲーセンに客が入る仕組みや工夫なども交えて紹介していて、ゲーセンの切り口を明確な角度で見せてもらえた気がした。

タイトーステーションやクラブセガ、Heyなどの実在店舗を参照に、1階の入口付近にはプリクラ・UFOキャッチャー、あとは『太鼓の達人』が並び、フロアの奥には音楽ゲーム、上階にいくにつれてマニアック化し、ビデオゲームはおよそ最上階とあるように、狭い日本の家屋事情の都合で筐体の設置を工夫し、客の流れを計算されたという解説はなるほどーと感心した。まるでコンビニの客の流れを読んだ商品配置みたいだ。

 

店舗の場所が、繁華街の行きやすい場所にあることも最大のメリットと踏まえた上の一方で、アメリカのゲーセンでは地方化が進み、車でないと行けない遠い距離にゲーセンがあるので閉店が後を絶たない、と語っていた。

日本でも、繁華街の少ない地方では国道沿いなどの路面店に大きなゲーセンがあるので、街のあちこちにゲーセンのある東京出身の自分にとって、逆に車でないと行けないゲーセンは、ある意味あこがれの場所だったりする。

映画内でも紹介された総合ゲーセンの「ラウンドワン」も、近場の都心ではお台場まで行かないとなかったり、昨年の今頃閉店してしまったけど、「ウェアハウス東雲店」も割と車移動圏内のゲーセンだった(←真夏の炎天下の中、東雲駅から徒歩で行ったら、思いのほかかなり遠くて大変な目に遭った人)。そういえば映画内に出てた「ウェアハウス川崎店」が、内装が九龍城そのものでとても驚いた。九龍城内でDDRをやってる画が、かなり異空間だった。

 

ウメハラ氏をはじめとする国内外のプロゲーマーたちが語る、対戦格ゲーや音ゲー独特の、対戦会場の一体感やゲーセン=交流場などは、格ゲーマーでも音ゲーマーでもないため、残念ながら特にこれといった言葉が出てこないのだが、そういう自分の若い頃からの居場所というか、ゲームでコミュニケーションが取れることや大切な思い出を仲間と共有しているのが、とてもうらやましいと思った。このへんは、自分が学生~青春時代はアーケードゲーム育ちでなかった外野からの視点となってしまうが、これから彼らと同じような経験をするかもしれない未来のアーケードゲーマーのためにも、形を変えつつも残してゆかねばならない遊び場でもあるし、これからも日本のゲーセンにはそうあってほしい、といった締めくくりだった。

 

表題でもある「100YEN」、1PLAY100円に懸けられた真剣さや1PLAYの重み、価値にも振れられていたが、これは今自分がやっている基本無料のソーシャルゲームの課金制にも関係してくる、わりとデリケートな話題で、いまだにモヤモヤがまとまっていないので、もうちょっと考えが固まったらここで書くかもしれないし、書かないかもしれない。とにかく、100円の価値について思うところが山ほどあり、それはアーケードでもソーシャルでも変わりないのは確かだ。

 

 

自分はいわゆる、政府が絡んでくる意味での「クールジャパン」的文化な視点よりも、日本国内ではフツーの光景が諸外国から見たらとても異様で珍妙、しかし工夫が凝らしてあってスゴイ! という、いつも通っている秋葉原を外国人視点で見たらどんな風に写るのだろう……みたいなロストイントランスレーション視点でずっと映画を見ていた。

これだけ街の中で一般的にゲーム筐体が並んでいる国も、おそらく日本しかないだろうし、近頃は長年親しんだゲーセンが軒並み閉店と寂しい現状だけど、このゲームがあって当たり前な光景が、いつまでも続くといいな……など、ぼんやりと考えていた。「今現在」(撮影時2011年)のゲームセンターが様子が映像内におさめられているのも、2年経った今となってはすでに貴重だし、とても有意義だと思う。

 

そういえば、送られてきたDVDパッケージに、本作の監督自らの直筆メッセージが書かれていた。

 

“Keep supporting arcade culture”

 

映画が届く先週末、アキバのゲーセンに行ったら、『ガイアポリス』と『エグゼドエグゼス』が稼働していて、どちらも3面までは何とかクリアできた。

これまであまりアーケードに慣れ親しんできてなかったけど、歳を取りすぎた今から始めても遅くはないだろうか……? そんな気持ちにさせてくれる映画だった。

 

「100 Yen: The Japanese Arcade Experience」、公式サイトからDVDが約25ドルで発売中なので、これを読んでも読んでなくても、興味がわいたら観ておくといい。そしてお前は(100円を握りしめてゲーセンに)走り出す! 何かに追われるように!!

 

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